
たまにはこういう、法律相談っぽい内容も書いてみようと思いまして。
“妻が不倫して家を出て行った。別居後、妻から「婚姻費用を支払ってくれ」と連絡がきた。自分は妻に対し、婚姻費用を支払わないといけないのか?”
こういう問題を取り上げてみようと思います。夫が不倫して家を出て行った場合でも同じ問題は起こりえますが、ここではあえて妻が不倫した場合と場面設定しておきます。
「不倫するのはだいたい夫だろ!」みたいな、しょーもないツッコミはやめようね。
ところで婚姻費用って?
まず、婚姻費用が何かって話ですよね。
婚姻費用っていうのは、ざっくりいうと、夫婦と未成熟の子が生活を維持するうえで必要な生活費のことです。
医療費とか、子どもの教育費とか、そういうのも含まれます。
家族仲良く、ふつーに生活しているときは、婚姻費用がどうだこうだというのは問題にならないです。
問題となるのは、夫婦が別居したときです。
たとえば夫が、「男は外で働き、女は家を守るもの。したがって、お前は専業主婦として家にいるべし」みたいな時代錯誤のクソ男だとします。
しばらくそれに従っていた妻は、ある日こう言うわけです。
「こんな生活イヤ!私はあなたの家政婦じゃないの!!」って。
これで妻は晴れて、クソ夫と別居することができました。めでたしめでたし。
…妻の精神的にはめでたしめでたしかもしれませんが、これじゃあ別居後、生活に困りますよね。
夫婦は、お互いに協力し、扶助しあう義務があります(きれいごとを言っているわけではなく、法律にそう書いてあります)。
この協力・扶助義務の一環として、夫婦のうち収入が多いほうから少ないほうに対して、生活費を負担する義務があるのです。
上記の夫のような人だと、「ふん!勝手に家を出て行ったのに婚姻費用だと?何を馬鹿なことを…」と言うかもしれません。
しかしながら、原則として、配偶者が自ら家を出て行ったからといって婚姻費用を払わなくてよいことにはなりません(てか、上記の例の場合、妻が家を出たのは確実に夫のせいだよね?)
婚姻費用の額は、夫婦の収入や子どもの数によって決まります。
この記事では詳しく説明しませんが、裁判所が婚姻費用の算定表を公表しています。この表を見れば、だいたいの婚姻費用の金額がわかるよ!というものなので、気になる方は確認してみてください。
では、妻が不倫して家を出て行った場合はどうなのか?
先ほど、原則として、配偶者が自ら家を出て行ったからといって婚姻費用を払わなくてよいことにはならない、と言いました。
でも、妻が不倫した挙句家を出て行った場合は別です。
不倫やDVは、離婚原因になるわけなのですが、この離婚原因を作った配偶者を有責配偶者といいます。
有責配偶者からの婚姻費用の請求は、基本的に認められません。
問題は、夫婦の間に子どもがいた場合です。
婚姻費用の中には、子どもの養育に関する費用も含まれます。
妻の婚姻費用請求が一切認められないとなると、子どもまで不利益を被ります。
そもそも、親が不倫したことは子どもには何も責任がありません。
ということで、有責配偶者からの婚姻費用請求であっても、子どもの養育費に関する限度では認められることが多いです。
こういうと夫側から、「養育費に関する限度って言っても、結局は妻がお金を管理するんだから意味ないじゃないか!」と怒りの声が聞こえてきそうです。
気持ちはわからんでもないですが、親としての最低限の責任を果たすためだと思って、そこは割り切ってくださいな。
まとめ
ここまでの話を簡単に整理すると次のとおりです。
まとめ
- 婚姻関係にある夫婦が別居すると、収入の多いほうから低いほうに対し、婚姻費用を支払わなければならない
- 有責配偶者からの婚姻費用請求については、基本的に認められない
- ただし、有責配偶者からの婚姻費用請求であっても、子の養育に関する部分は認められることが多い
ただし、これはあくまで一般論です。
個別ケースでどうなるかについては、必ず、弁護士などの専門家に相談してください。
人生はいろいろありますから、配偶者がいきなり家を出ていったとしても、前を向いて生きていきましょう!笑
以上です、裁判長。