アパートやマンションでペットを飼いたい人が知っておくべきこと

アパートやマンションでペットを飼いたい人が知っておくべきこと

以前、友人からこんな相談を受けました。

友人
友人

今住んでいるアパートから会社近くのアパートに引っ越そうと思っているんだけど、僕、ハムスターを1匹飼っているんだよね。

引っ越し予定のアパートはペット禁止みたいなんだけど、ペットは家族と一緒じゃん?それなのにペット禁止って、あんまりじゃない?

ってか、ちゃんとゲージに入れて飼っているから、アパートを汚したりすることも絶対に無いんだけど…

最近のアパートや賃貸マンションの賃貸借契約書には、「賃借家屋内において、犬、猫等の動物類を飼育してはならない。これに違反した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる。」というような条項(このような条項を以下では、「ペット飼育禁止条項」と呼びます。)が入っていることが多いようです。

確かに、アパートの一室でトラやクマが飼育されてたらめちゃくちゃヤバいので、賃貸人がペットの飼育を禁止するのは仕方ないように思えます。

でも、私の友人のように、ハムスターを1匹飼っているだけなら何も問題なさそうですよね?

ペット飼育禁止条項は、トラだろうがクマだろうが、ハムスターだろうがインコだろうが、とにもかくにもアパートや賃貸マンション内でペットを飼育するのを一切禁止するものです。

はたして、動物の種類にかかわらずペットの飼育を禁止するペット飼育禁止条項は有効なのでしょうか?

今回の記事では、このような問題を考えてみたいと思います。

この記事を読めばわかること

  • ペット飼育禁止条項の有効性
  • ペット飼育禁止条項に違反した場合のリスク
  • ペット飼育禁止条項がない場合の、ペット飼育の可否

なるべく正確な情報をお伝えできるよう、記事の作成にあたって裁判例や文献等のリサーチをおこなっておりますが、正確性を保証するものではありません。情報の正確性について問題がある場合、告知なしに情報を変更・削除することがあります。また、記事は作成時点の法令等に基づき作成しているため、情報が古くなっていることもありますのでご注意ください。

個別具体的なケースについては、弁護士等の専門家に直接ご相談いただくようお願い致します。

ペット飼育禁止条項は有効!

早速結論からお伝えしますが、ペット飼育禁止条項それ自体は、多くの裁判例でその有効性が認められています。

例えば、借主が、ペット飼育禁止条項のある賃借家屋(共同住宅)内で5年近く犬を飼育し、その飼育方法にも隣室等に注意を払っていた事案で、裁判所は次のように判断を示しています。

確かに、犬を飼育すること自体は何ら責められるべきことではないが、賃貸の共同住宅においては、犬の飼育が自由であるとすると、その鳴き声、排泄物、臭い、毛等により当該建物に損害を与えるおそれがあるほか、同一住宅の居住者に対し迷惑又は損害を与えるおそれも否定できないのであって、そのような観点から、建物内における犬の飼育を禁止する特約を設けることにも合理性がある

東京地判平成7年7月12日判決

ほかにも、賃貸マンション内で借主が猫を飼育していたという事案で裁判所は、

本件のような多数の居住者を擁する賃貸マンションにおいて…は猫の飼育を禁止するような特約がなされざるを得ない

東京地裁昭和58年1月28日

と判断を示しています。

ペット飼育禁止条項それ自体は、有効なものと言わざるを得ないでしょう。

ペット飼育禁止条項なんて無効だ!…と主張するのは、ちょっと厳しいということですね。

ペット飼育禁止条項に違反したらどうなる?

賃貸借契約を解除される可能性がある

賃貸借契約書の記載内容にもよりますが、ペット飼育禁止条項に違反したら解除するよ、みたいに書いていることがほとんどだと思います。

ですので、ペット飼育禁止条項があるアパートや賃貸マンション内でペットを飼っているのが貸主にバレた場合、速攻で賃貸借契約を解除される可能性があります。

冒頭の友人のケースで考えてみましょう。

ハムスター1匹とはいえ、ペットはペットです。

ですので、もし友人がペット飼育禁止条項があるアパートや賃貸マンション内でハムスターを飼っているのがバレたら、賃貸借契約を解除される可能性があります。

先ほど紹介した裁判例(犬を飼育していた事案)も、ペット飼育禁止条項に違反したことだけを根拠に賃貸借契約の解除が認められています。

きちんと飼育していたとか、隣近所に迷惑をかけていなかったとかいう事情は考慮されていないのです。

場合によっては、賃貸借契約の解除が認められないこともある?

ここからは完全に個人的な見解なのですが、冒頭の友人のケースでは賃貸人による契約解除が認められない可能性もあるかなと思っています。

賃貸借契約というのは、スーパーに行って野菜を買いました、みたいな1回こっきりの契約ではなくて、基本的には数年~数十年続く契約ですよね。

こういう継続的な契約は、当事者間の信頼関係がベースとなります。

ですので、貸主が一方的に賃貸借契約を解除するには、借主との信頼関係が破壊されたと認められることが必要となります。

飼育状況にもよりますが、ハムスター1匹だけなら、きちんと飼育していれば部屋が汚れたり、部屋に臭いがついたりすることもないと思います。

それなのに、果たして貸主と借主との間の信頼関係が破壊されたと言ってよいのかどうか、個人的にはとても疑問です。

とはいえ、繰り返しなりますが先ほど紹介した裁判例(犬を飼育していた事案)も、ペット飼育禁止条項に違反したことだけを根拠に賃貸借契約の解除が認められています。

ですので、冒頭の友人のケースでも、賃貸借契約が解除される可能性は十分にあります。

飼っている動物の種類に関係なく、ペット飼育禁止条項に違反したら契約解除される可能性があると考えておきましょう。

賃貸借契約書にペット飼育禁止条項が無い場合は?

基本的にはペットを飼っても問題ないけど…

ペット飼育禁止条項がない場合は、貸主もペットの飼育を容認していると考えられるので、基本的には、賃借アパート内でペットを飼うことは問題がありません。

ただし、飼育方法には十分に注意する必要があります。

ペットの飼育により、賃借アパート汚染、損傷するとか、近隣住民に迷惑をかけたり損害を与えたりしてはダメです。

こうした事情は、たとえ賃貸借契約書にペット飼育禁止条項がないとしても、貸主と借主との信頼関係を破壊するものとして賃貸借契約が解除される可能性があります。

アウトな飼育方法の具体例

少し古い裁判例ですが、借主が猫10匹を部屋の中に放し飼いにし、かつ、賃借家屋付近にペットフードなどを置いて野良猫十数匹の餌としていた事案で、裁判所は貸主の賃貸借契約解除を有効と認めています。

裁判所が認定した事実は次のとおりです。

  • 賃借家屋内の柱や壁面に多数の損傷があった
  • 賃借家屋が不衛生な状態に置かれていた
  • 野良猫のため近隣住民が被害を受け、貸主が近隣住民から苦情を言われていた

そりゃ貸主から、「お前もう出て行けよ」って言われても仕方ない事案ですね(笑)

ここで注意してもらいたいのは、上記のような極端に悪い飼育方法ではなくても、賃貸借契約を解除されることがあるということです。

ペット飼育禁止条項がないからといって、好き勝手に飼育するのではなく、賃借アパートを汚したり傷つけたりしないよう、また、隣近所に迷惑とならないようしっかり心がける必要があります。

常識の範囲で飼育することを心掛けましょう!

まとめ

この記事のまとめ

  • ペット飼育禁止条項は有効
  • ペット飼育禁止条項に違反したら、ペットの種類や数などに関係なく賃貸借契約が解除される可能性がある
  • ペット飼育禁止条項がない場合はペットを飼ってもよいが、常識の範囲内で飼育する必要がある

アパートや賃貸マンション内でどうしてもペットを飼いたいのであれば、ペットの飼育が許可されている物件を見つけて引っ越すしかありません。

スモッカなどの賃貸情報サイトを利用して、条件に合う物件を見つけましょう。

人も動物も、どちらも安心できる環境で過ごせるといいですね!

以上です!

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